ダウン症候群の患者さまの診療について2

こんにちは!小畑歯科医院、歯科医師の岡です。今回はダウン症候群の患者様について専門的な視点でお話させていただきます。

ダウン症候群は、21番染色体が3本ある「21トリソミー」によって生じる先天性の疾患です。我が国の患者数はおよそ5万人とされ、平均寿命は1950年代まで10歳以下でしたが、医療の発達により現在の平均寿命は約60歳代とされます。平均寿命が長いことを考慮すると、ダウン症候群の方の人口は増加傾向と考えられます。

 

次に、主な合併症(ダウン症候群が原因となって起こる別の病気)についてお話します。

①先天性心疾患(生まれつきの心臓の病気)。ダウン症候群の方の乳児の54~66%にみられます。最近ではこの心臓の病気の早期治療の成功例が増えており、そのおかげで平均寿命が延びています。心臓の病気をお持ちの方は、抜歯などの出血する処置の前には、感染性心内膜炎の予防のため、抗菌薬を服用していただく場合があります。
②てんかんの発症率は約10%にみられます。
③甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症、Ⅰ型糖尿病などの内分泌疾患(ホルモンに関わる病気)を合併しやすいです。
④難聴や夜間のいびき、日中の眠気などの睡眠時無呼吸症候群がみられることがあります。
⑤免疫機能が低下し、感染のリスクが高く、特に気道感染症にかかりやすいです。
⑦若年(40代以上)でのアルツハイマー型認知症の発症リスクが高いです。

ダウン症候群の方にみられる歯科的特徴についてお話します。

①骨格・口腔構造の特徴

小顎(下顎が小さい)、高口蓋(うわあごが狭くて高い)、開咬・反対咬合(受け口や前歯がかみあわない)、舌突出(筋力の弱さから舌が前に出やすい)などがみられます。

②歯の発育異常

歯の萌出遅延(通常より歯が生えるのが遅い)、歯の先天欠如(生まれつき歯がない)、矮小歯(小さい歯)、円錐歯(異常な形をした歯)などがみられます。

③歯周病のリスクが大きい

免疫機能の低下により、重度の歯周病になりやすく、年齢に比べて進行が速い傾向にあります。

④むし歯は意外と少ない傾向にありますが、食事内容や歯の形態、唾液の性質などが影響しますし、口腔ケアが不十分だとむし歯になるリスクが高まります。

口腔健康管理を行う上で配慮すべき事柄についてお話します。

①医療面の配慮

心疾患への対応⇒感染性心内膜炎の予防のため、必要に応じて抗菌薬の事前投与を行います。

②認知・行動的特徴への対応

●知的能力障害の程度に応じた対応

・言語理解や表現に制限があることが多いため、簡潔で視覚的な説明(絵カードやジェスチャーを交えたコミュニケーション)が有効です。

・ご両親や支援者(施設の職員の方など)からの情報取集(普段のコミュニケーション方法、好きなことや苦手なこと)

 ●慣れるためのトレーニングが必要な場合が多い

・初診から徐々に慣れていくようにトレーニングを行います。(チェアーに寝る、ブラッシング、好きな味の歯磨剤をつける、器具に慣れる、触るなど)

・ルーティンを重視。毎回の手順が同じだと安心しやすいです。

●感覚過敏やこだわりがある場合

・音や光への配慮(治療機器の音を事前に聞いてもらう。照明を和らげる。)

・同じ器具や手順を使います。好きな音楽や安心できるものを持ってきていたたくのも有効です。

協力がどうしても得られない場合、鎮静法や全身麻酔下でのむし歯治療を選択せざるを得ない場合もあります。お医者様との連携も非常に大切です。

そうならないためにもトレーニングや予防処置(歯石取りやシーラント、フッ素塗布)などを幼少期から行い、口腔健康管理を行っていく必要があります。ご本人にはもちろん、歯ブラシ指導やフッ素の大切さなどの健康教育を、ご家族や施設の職員などの支援者に対しても、お願いすることが大切です。

住み慣れた地域で可能な限り自分らしい生活を継続していくためには、歯科関係者はもちろん多職種の方々とも連携して、ご本人とご家族を支援していく体制が望まれています。

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投稿日:2025年7月22日  カテゴリー:ブログ

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